アジソン病(副腎皮質機能低下症)

アジソン病は、副腎皮質から分泌される副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)が不足することによって起こる病気であり、犬でしばしば認められ、猫ではきわめてまれです。

副腎皮質ホルモンの産生が低下すると体に塩分(ナトリウム)が保てなくなり、血液量は少なくなり、心臓の機能は弱り、糖や脂肪の代謝もうまく働かなくなります。

アジソン病(副腎皮質機能低下症)の症状は?

元気がない、無関心、食欲不振、下痢、嘔吐、震え、体重の減少、水を大量に飲む、尿の量が増えるなどの症状があらわれます。

この症状は良くなったり悪くなったりを繰り返します。急性のものでは動物にストレスが加わると、突然のショック(アジソンクリーゼ)に陥り、迅速に治療をしなければ命に関わることもあります。

アジソン病がよく見られる犬種としては、ビーグルやスタンダード・プードル、コリー、グレート・デーン、ロットワイラー、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリアなどがあり、若齢から中高齢(平均4歳)の発症が多く、特にメスによく見られます。

副腎皮質自体が免疫を介して破壊されたり、腫瘍薬剤などで破壊されたりして起こる場合と、副腎皮質に指令を与える視床下部や下垂体に異常があって起こる場合があります。

この他、長期間または大量の合成副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)治療を突然やめた場合(医原性)に起こることもあります。

アジソン病(副腎皮質機能低下症)の治療は?

正しい診断と治療には各種の血管夜検査や副腎機能検査が必要です。

急性の症状が出現した場合は、ショック状態の改善などのため、緊急治療が必要になります。静脈内輸液による循環改善とホルモン補充療法を行います。

長期の治療では、不足している副腎皮質ホルモンの補充療法を生涯にわたって行います

医原性に起こったものでは、自分で副腎皮質ホルモンをつくれるようになれば投薬が不要となることもあります。治療に対する反応を評価するために、定期的に検査値をモニターして、必要があれば薬の用量を調節します。

アジソン病の症例

13歳 Mダックスフンド

主訴:急にぐったりしてきてしまった。

もともとクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の治療のため、副腎皮質ホルモン産生を抑制するトリロスタンという薬剤を服用していた。最近元気がなくなってきたので自らの判断で薬の量を二倍に増やしていた。

来院時にはショック状態に陥っており、電解質バランスの異常を起こしていました。可能性として薬の過剰投与による副腎機能低下が考えられました。症状が重篤なため、死亡のリスクが高い状態でしたが、数日間入院して点滴治療・電解質の補正を行い、無事退院しています。

関連の記事

  • 尿崩症尿崩症 尿崩症は主に多飲多尿を主訴とする病気です。尿崩症は原因によって中枢性尿崩症と腎性尿崩症に大別されます。 中枢性尿崩症は下垂体から分泌 […]
  • クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症) クッシング症候群とは副腎からステロイドホルモンであるコルチゾールが過剰分泌されることにより引き起こされます。クッシング症候群はゆっくりと進 […]
  • 糖尿病 動物の体を構成する細胞は、体に取り込まれ蓄えられた糖分を血液から吸収して、エネルギー源として活用しています。 その際に血液中の糖分を […]
  • 低血糖症低血糖症 低血糖症とは、血中の糖分濃度が著しく低下してしまう病気です。 脳は血液中の糖分を唯一のエネルギー源として活動しているため、血糖値が低 […]
  • 上皮小体機能亢進症上皮小体機能亢進症 上皮小体ホルモンの働きとは、血液中にカルシウムが不足するとカルシウムを骨から放出させ、血液中のカルシウムの濃度を上昇させます。    […]
  • 上皮小体能低下症上皮小体能低下症 上皮小体ホルモンは、血液中のカルシウムの濃度を上昇させるホルモンです。 血液中にカルシウムが不足するとカルシウムを骨から放出 […]
公開日:2014/10/24
更新日:
治療は光が丘動物病院グループへ
日本で数少ない「1.5次診療」をおこなっている当グループは、
大学病院に匹敵する獣医療の提供飼い主様に徹底したインフォームド・コンセントしています。
大切な家族でお困りの際には、お気軽に相談ください。

PAGE TOP