犬の椎間板ヘルニアで使う専用手術器具
ワンちゃんの椎間板ヘルニアが当院によく来るようになってからもう10年以上が経ちます。
大学病院での手術が一般的だった
当時は手術できる病院も少なく、大学病院に紹介するケースがほとんどでした。
と言うのも、連なっている背骨のどこにヘルニアが出来ているのか、町の病院で確定的な診断が出来なかったからなのです。
椎間板ヘルニアを疑った場合、どの場所でどのくらい強い圧迫があるのかを調べるにはMRI検査をしなければなりません。
このMRIは人と同じものを使います。その関係から、1台設備するにしてもかなり広い検査スペースが必要になってきてしまうのです。
都心にある動物病院に関わらず、MRIの設備を整えられる一般病院は限られており、それゆえ大学病院への紹介と言う流れになってしまっていたのです。
ですが、その頃から少しずつMRIとCTの検査専門の動物病院ができるようになりました。
MRI・CTだけの専門病院
この施設が広まることにより、一般の病院でも技術と知識があることによって椎間板ヘルニアの手術が可能になっていったのです。
以前は疑わしい症例が現れた場合は大学病院へと言う流れでしたが、これが
かかりつけの病院内で基本的な検査を行う→MRI専門の病院で撮影を行ってもらう→結果をもとにかかりつけの病院で治療を行う
という流れに変化していきました。
手術が一般的に
数年後には椎間板ヘルニア手術を行える病院はどんどん増え、今はホームページなどでも比較的簡単に見つけることが出来きます。
また、おそらく飼い主様のご自宅の近くにも手術が可能な病院があるのではないでしょうか?
さて、このように手術が一般的におこなれるようになってくると、その手術に使う器具も進化していきます。
手術器具の進化
椎間板ヘルニアの手術は背骨に穴をあける手術ですので、もちろん骨を削っていかなければなりません。
一般的に骨を削る器具は、写真の様に先がドリルの様になっています。
イメージとしては歯医者さんで虫歯の治療をする際に、歯を削るのと同じような機械です。
この機械で椎間板ヘルニアの手術を行う際、とても注意しなければいけない点があります。それは機会での掘削が進行していくと、中心にある太い神経(脊髄)が入っている空洞に抜けます。
掘削の力の加減がうまくできなく、この空間の中にある脊髄にドリルが当たってしまうと神経をひどく傷つけてしまう恐れがあるんです。
当院でも当初はこのやり方でしか行う他なく、かなり慎重に掘削の作業を進めていました。
ですが数年前より新しい専門器具を導入することとなりました。
超音波で骨を削る。やわらかい組織は削れない。
この機械はドリルを使わず骨を削ることが出来、また神経に接触してもその神経を傷つけることが無いという、とても安全で確実な機械です。
原理は超音波で金属の歯を震わし、骨を砕いていきます。
ただしこの骨を砕く為の超音波の振動を限定的なものにすることで、もし歯が神経に接触しても神経にはダメージが無いのです。
分かりやすく言うと、固いものは砕けるが柔らかいものは砕けないという機械なのです。
この機械の導入によりより安全に手術が行えるようになり、ドリルよりも開ける穴が小さく済むようになりました。すなわち動物へのダメージも少なく済むようになったのです。
椎間板ヘルニアの手術が珍しくなくなった今ですが、「よりリスクを避けたい」「安全な機械で手術をしてほしい」という方は是非当院にご相談ください。
大学病院に匹敵する獣医療の提供と飼い主様に徹底したインフォームド・コンセントしています。
大切な家族でお困りの際には、お気軽に相談ください。