肥満の犬の椎間板ヘルニアの症例
現代では人と同じようにワンちゃんも肥満傾向にあり、その悪影響が色々な病気を引き起こしてしまいます。もちろん椎間板ヘルニアも例外ではありません。
脂肪とヘルニア
椎間板ヘルニアの症例で多い犬種はやはりミニチュアダックスフントですが、肥満傾向であるとさらに発症のリスクが高まるといえるでしょう。
このサイトの他のページでもご紹介させていただいておりますが、Mダックススフントなどの犬種の椎間板はもともとヘルニアを起こしやすい構造になっています。
人は直立歩行なので、肥満により腰の椎間板や膝の関節に大きな負担がかかります。ワンちゃん達は4足歩行なので人ほど背骨への負担はないにせよ、運動やちょっとした動作で普段より急激な負担がかかり、椎間板ヘルニアを発症してしまうことがあります。
肥満の場合、実際の手術ではどのような弊害が出るのでしょうか?
皮下脂肪の壁
椎間板ヘルニアは問題となっている椎間板に向けて背中からアプローチ(切開)していきます。通常の体系の仔であれば、背中にはあまり脂肪組織はありません。
飼い主様もご自宅のワンちゃんを触ってみるとわかるかもしれませんが、背中をさわると皮膚の下に連続した骨を触ることができると思います。これはもちろん背骨なのですが、くわしくは背骨から出ている骨の突起物です。
肥満の仔は皮下脂肪が厚くなっているため、皮膚の上から触れない場合が多いです。つまり通常の仔よりも手術部位に達するまでに時間を要してしまいます。
また、椎間板ヘルニアの手術は繊細で細かな手術となります。原因となっている物質を取り除く際も、骨にとても小さな穴を開ける作業が必要です。
肥満の仔は皮下脂肪の厚さから、この穴を開ける部位までの距離が通常体形の仔よりも遠くなってしまいます。その為、通常よりも遠い場所で繊細な作業を行わなければならなくなり、難易度が上がってしまいます。
麻酔のリスク
椎間板ヘルニアの手術は短時間で終わる手術ではありません。手術が終わるまでの間、ワンちゃんは麻酔を嗅がせ続けられますので、長い手術程麻酔薬の量も多くなります。
肥満のワンちゃんは体内の脂肪の影響により、肝臓の代謝が低下していることがあります。麻酔薬は肝臓で代謝されますので、肥満の仔は麻酔が代謝されづらいと言えます。
また、麻酔は脂肪に溶けやすくいため、脂肪の組織に吸収されてしまいます。そしてこの脂肪組織への血流は非常に乏しいため、代謝が非常に遅くなってしまいます。
「麻酔から覚めなくなってしまう」というケースにどの子も陥ってしまう訳ではありませんが、麻酔から覚醒しにくい状態になっていると言えます。
リハビリの負担
肥満のワンちゃんは通常の仔よりも運動量が減ります。呼吸が苦しくなったりすることにより、自発的に運動をすることを諦めてしまう仔が多いです。
椎間板ヘルニアの手術後はなるべく早いリハビリの開始が望ましいとされています。もともと活発な仔はリハビリに対しても協力的な仔も多く、回復もより期待できます。
ただし肥満により運動への気力が失われている場合、なかなかうまくリハビリの成果が出てこない場合も多いです。
神経の反射が回復しはじめても、体が重い為なかなかうまく自分の体を動かすことができません。
標準体型を目指そう!
健康な子でも椎間板ヘルニアのリスクは常にあります。
そのリスクをさらに高め、手術やリハビリへの影響も高くなる前に、食事の変更や制限、日々の取り組みで肥満から脱出しましょう。
ワンちゃんのダイエットは難しいものではありません。かかりつけの獣医さんにも相談してみてくださいね。
大学病院に匹敵する獣医療の提供と飼い主様に徹底したインフォームド・コンセントしています。
大切な家族でお困りの際には、お気軽に相談ください。