胆嚢切除術のキーポイント その2
先週ご紹介した胆嚢切除の続きです。今回は実際の症例をもとに話を進めてみたいと思います。
臓器の破裂か?
急に元気がなくなったということで来院されたチワワちゃんでしたが、血液検査やレントゲン、超音波検査などを一通り行った結果、お腹の中のどこからか出血がありそうと仮の診断が下りました。
ただし、貧血を示す値の減少が止まっていたため、おそらく出血は一時的なものでもうおさまっているのでは?と判断し、緊急の開腹手術は見送りそのまま経過を見ながら入院となりました。
緊急手術へ
その後3日ほどたったところでお腹の中にたまった液体が茶褐色に変化しました。これは胆汁がお腹の中に漏れ出てしまったサインでもあります。この所見から胆嚢破裂を疑い緊急手術となりました。
開腹すると肝臓の一部と、やはり胆嚢が破裂していました。肝臓の出血は予想通り止まっていたため、胆嚢の切除へと進みました。
今以上の汚染を防ぐために胆嚢の周りをガーゼで覆い、胆汁の漏出を防ぎます。慎重に肝臓との間を剥離し、胆管を結紮して摘出、残るはお腹の中に漏れ出た胆汁の洗浄を行います。
経過が長引いてしまったため予後が心配でしたが、手術後は元気も食欲もみるみる回復し、今では普通の仔と変わりません。
胆嚢は切除だけでなく、敗れた部分を縫合したりすることで整復も可能ですが、今回はダメージが著しかったために摘出を選択しています。手術後は胆汁の分泌が普通とは異なるため、低脂肪食を選択してあげています。
生命力のすごさ
別の手術で、小腸の大部分を摘出せざるを得なかった場合などもあるのですが、不思議とその後は食事を普通に食べてくれ、便も問題なく出してくれることが多くみられます。
腸や胆嚢を切除したら、便にも異常が出てもいいものだと感じるのですが、体って不思議で強くできているものですね。
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