飼い犬が椎間板ヘルニアになったらどうなる?
当院の外科手術で椎間板ヘルニアの手術程頻繁に予定されるものはないと言っていいほど、この病気は私たちの身の回りで起こっています。
今回は実際椎間板ヘルニアになったら、手術やその後のリハビリなどどういった流れになるのかご紹介します。
後ろ足が立たない!
実際の症例を例にとってお話させていただきます。
ミニチュアダックスフント 7歳 避妊♀
かいぬしさんが気付いた時にはその仔の後ろ足はもう動かない状態でした。
インターネットで調べ、自分の自宅からいける範囲で手術の得意な病院を探してきたとおっしゃって当院に来院されました。
当院に来院されてきた時にもやはり後ろ足は全く動かず、おしっこも自力ではできず、足先の強い痛みもない状況で、程度としてはかなり悪い状態です。
この全く動かず、自力で排尿ができく、痛みを感じない状況だと、積極的に手術の方向を考えなければなりません。
例えば、足の運びは悪いが歩けるといった状況ならば、ステロイドを中心とした椎間板ヘルニアの炎症を取り除く内科治療を優先します。
このように、その仔がどれほどの運動ができて、どれくらい運動不能になっているかで治療方法が変わってくるのです。
確定診断はMRI
椎間板ヘルニアだろうというところまでは病院にきていただければすぐにわかります。ただし、背骨は小さな骨が縦に並んでできており、その間にクッションとして存在しているのが椎間板です。
この椎間板は通常のレントゲン検査では正常と異常は見分けづらいので、どの背骨とどの背骨の間の椎間板が悪さをしているのかはMRI検査でしか確定できません。
一般的に動物病院にMRIはない
とはいっても、東京都内の動物病院でMRIやCTを抱えている動物病院はほとんどありません。
こういった場合、MRIとCTを専門に扱っている検査センターにすぐに電話し、なるべく早い時間で検査の予約を取ります。
場所がわかればいざ手術へ!
MRI検査によりどの骨と度の骨の間が悪いと分かれば、後は手術へとすぐに流れていきます。
もちろん背中側から皮膚を切っていき、病変部の近くの背骨に張り付いている背筋を丁寧にはがしていきます。
背骨が露出されたら、骨に穴を開けていきます。
専用のドリルや超音波掘削器などを使い慎重に小さな穴を開けていきます。
隙間にある悪さをする物質を取り除く
穴を開け切ると脊髄が露出されます。この椎間板と脊髄の間にある空間に神経を圧迫していた物質が詰まってしまっています。
細かく細い器具で丁寧に掻きだし、なるべく残りが無いように丁寧に洗浄し、手術自体はここでほぼ終わりです。
最後は広げた筋肉や皮膚などを縫合糸を使って縫い合わて終了です。
手術後はリハビリが重要
さて、無事手術が乗り越えられましたが、実は手術をしたからと言って翌朝からすくっとたちあがったりする子はほとんどいません。
そこで手術の翌日から早速リハビリが始まります。
手術後3日くらいまではあまり無理のないリハビリを、それ以降手術以外の部位に異常がなければリハビリの段階を高めていきます。
術後1週間ほどで退院となりますが、その際に飼い主様にリハビリのやり方を伝授します。
今回の症例は術後1ヶ月まではあまり変わりのない神経の反射でしたが、それを過ぎたところで見るみると回復していきました。
このように、回復のタイミングもあまり分かっておらず、手術をしたからと言って必ず良くなるものでもありません。
ただし言えることは、気づいた時にはすぐに動物病院に行き、状態を確認してもらった方がいいという事です。
大学病院に匹敵する獣医療の提供と飼い主様に徹底したインフォームド・コンセントしています。
大切な家族でお困りの際には、お気軽に相談ください。